前回のDoxbridge編に続き、今回も大賀先生より、ジャッジブレイクされた海外大会であるUhuru Worldsについてのブログを寄贈していただきました!

是非お読みください!

 

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こんにちは。大賀哲です。遅くなりましたが、1月10日〜14日に開催されたUhuru WorldsにIAとして参加しました。予選は7ラウンドすべてチェアをして、R5がACチェックが入りかなり厳しいラウンドでしたが、その後2ラウンドは単チェで、無事にブレイクすることができました。

 

1.Uhuru Worldsに出ようと思った理由

2.出る前にしたこと

3.ジャッジテスト

4.予選

5.本選

6.まとめ(+ちょっとしたTIPs)



1.Uhuru Worldsに出ようと思った理由

年末年始にDoxbridgeに出て、残念ながらブレイクできなかったのですが・・・これは結構惜しかったんじゃないのかという勘違いの下、大きな大会あるし出てみよう!?という軽い気持ちでIA応募しました。

 

Uhuru Worldsがどういうものなのかよくわかってなかったですが・・・アフリカのThink Uhuruという団体(アフリカの若者の声を高めることを目的としてディベートやスピーチ、リーダーシップ、能力開発などの事業をしている)が去年から始めた大会のようでした。

https://www.thinkuhuru.com/

 

2.出る前にしたこと

Doxbridgeからあまり日が経っていないこと、Evergreen, Ryosoはディベーターででる予定だったので、むしろそちらの準備に力を注いでいたこと、公私ともに普通に結構忙しかった・・・ことなどもあって、あまり対策らしい対策はできなかったです。

 

Doxbridge編でも紹介した下記を改めて読み返したのと、あとDoxbridgeで知り合ったインド人ジャッジからWorldsのJudge Manualを読めと言われたので(たぶん初めて)読みました。Contradictionの取り方とか実はよくわかってなかったことも多く、これはこれで勉強になりました。

 

How to be a good and useful wing judge (Nick Zervoudis & Enting Lee)

https://zervoudis.com/post/winging-guide-2020/

 

Korea WUDC Debating & Judging Manual

https://drive.google.com/file/d/1bUlNpNPOjmXibDKUwRuDk_qmbT8oLa45/view?fbclid=IwAR2T9tblh5uO6tXmCVoqx005EOJtoDO_5d2xNruY9N8M2B9W4QFFXMfOHBA

 

3.ジャッジテスト

所謂、多岐選択式ジャッジテストで、記憶する限り迷うような問題もなく比較的簡単だったのではないかと思います。1月上旬でわりとバタバタしたなかでやっつけでだして当日を迎えます。

 

4.予選

Uhuru Worldsは全部で250チームくらいが参加して、タイムゾーンごとにPanthera(北米・南米・欧州・アフリカ)とLoxodonta(太平洋からアジア、中東まで)に分かれて別々に予選してました。私はLoxodontaのほうの予選に出ました。参加チームが120ちょっと、ジャッジが60-70人くらい参加してました。

 

以下、ラウンド:大賀の役割。( )内はチェアとパネルを足したジャッジの数、2行目からモーションです。

 

R1:(2)チェア

Info:Geoengineering is the deliberate large-scale intervention in the Earth's natural systems to counteract climate change. The following are currently proposed techniques: solar radiation management, carbon dioxide removal, weather modification.

 

THBT the environmental movement should heavily prioritize funding geoengineering technologies as a solution to climate change.

 

いきなりチェアだったのでびっくりしました。最初はまあこんなもんかなという古典をアレンジした感じのモーションで、パネルと完全一致だったので、JD、OAともに平和に終りました。(チェアになることはないと思い)英語OA実はほとんど練習してなかったです・・・。途中英語がなかなか出てこなくて結構焦りました(汗)。 

 

R2:(2)チェア。1点ラウンド

Info: In recent years, many sports leagues have overseen the creation or expansion of leagues and/or tournaments playing modified short-form versions of their respective sports. Often these short-form versions are characterised by a faster pace, shorter games, fewer players per side, and/or simpler rules. Examples include T20 and The Hundred (cricket), Rugby 7s and RugbyX (rugby), Fast4 Tennis, 3x3 Basketball, etc.

 

THBT sports leagues facing declining viewership should heavily invest in the development of modified short-form versions of their games.  

 

1位と4位が逆という結果で、話してみると私とパネルの人でOGから受け取ってる情報とそれをどう評価するかで結構乖離がありました。OGの位置でそこそこ白熱しましたが、最終的にはまとまりました。

 

私:OG>CO>CG>OO

パ:CO>CG>OO>OG

最終:CO>OG>CG>OO

 

R3:(2)チェア。1点ラウンド

 

THBT animal rights movements should actively advocate against traditional religious and cultural practices that harm animals (e.g. Halal slaughter, Indigenous whaling, animal sacrifices etc.)

 

モーションは普通でした。インド系の参加者が多かったので、traditional religionの方がいて怒られたらどうしようと思ったくらいです(どうしようもないですが・・・)。私とトレーニーの方という組み合わせで、1位がクリアでOG/OO/CGの位置づけで差異が2箇所というくらいだったので、とくにOGの位置づけを話し合いました。大体この辺から、チェア業にもOAにも慣れてきました(下位ラウンドだったからというのもあると思いますが・・・)。

 

私:Me: CO>OG>OO>CG

ト:CO>CG>OO>OG

最終:CO>OG>CG>OO

 

R4:(2)チェア。3点ラウンド

THS the Indonesian government's moves towards greater regional autonomy.

 

モーション見た瞬間は、は?という感じでしたが、所謂中央集権vs地方分権の話で、(コンテクストはよく理解できてませんでしたが)ディベートは中央集権でoppressionがあるvs地方分権でリソース配分されなくなる・・・というわりとありがちな流れでした。

 

私:OO>CG>CO>OG

パ:CG>OO>OG>CO

最終:OO>CG>CO>OG

 

1位と2位が逆、3位と4位が逆という順位で斜めの比較で何点か食い違いがあり、議論しました。そんなに揉めなかったです。

 

R5:(2)チェア。9点ラウンド

Info: For the purposes of this debate, prescriptivism refers to the view that labels have specific, unchanging meanings and ought to be used “correctly” (i.e. by those who fit the definition of that label). Descriptivism refers to the view that labels are flexible and can be used by anyone who feels comfortable with that term.

 

THP a world where LGBTQ+ labels are widely believed to be descriptive rather than prescriptive

 

いままではわりとアベレージ3位・4位くらいのラウンドでマイペースにやってたんですが、かなり厳しめラウンドにアロケされてしまいました。パネルがAC、9点ラウンド、モーションがちょっと意味不明・・・と、かなり厳しいラウンドでした。

 

ディベート自体もクロースで、いやあこれはヤバいかもと思ってましたが、パネルとは1位2位が逆なだけでした。頑張って説得した結果、大賀のディシジョンにしてくれました。説得できるとは思ってなかったので、そこも少し驚きました。自分でも気づいていない点を教えてもらったり、ディスカッションの満足度はかなり高かったです。OAでは2位にしたCGから結構criticalな質問が来ましたが、頑張って答えました。。

 

私:OG>CG>CO>OO

パ:CG>OG>CO>OO

最終:OG>CG>CO>OO

 

この後の2ラウンドは、どちらも単チェかつサイレントだったのでとくに書くこともないのですが、モーションの紹介だけ。

 

R6:(1)単チェ。6点ラウンド

Uriarra Village is a town with a population of 349 that is located west of Canberra. It is the only town in Australia held under “community title”; this means that the village community owns and maintains services and infrastructure including roads, community lands, the village hall, and stormwater. The village receives minimal services from the state government and has a degree of independence in passing local regulations.

 

THW allow rural communities to vote to enact community title

 

R7:(1)単チェ。5点+αラウンド

THBT in areas with high crime, governments should pay gangs in return for reductions in violent crime in the areas they control

 

5.本選

結局、全ラウンドでチェアだったので、なんとなくブレイクするのかな~という気でいました。で、ブレイクはできたものの本選はESL Quarterでバイバイされてしまったので、結構下位ブレイクではなかったかと思います。 

 

ESL QF:(3)パネル

THP a world without political parties*   

*where all candidates run as independents

 

なんか見たことあるなーと思ったら、Twitter Debate Openで負けたモーションでした(涙)。ちなみにパネルだったんですけど、チェアはインド人、もう1人のパネルもインド人でした(ACでDoxbridgeのときも一緒だったNarayan Sharmaさん)。

 

各チームの主要な論点はだいたい以下の感じで、

OG:政党があることでPolarizationgが進む。政党がないと有権者の選択肢拡がる。マイノリティのrepresentationが進む

OO:政党がないと政治がunstable。政党がシンクタンクの役割。政党政治の下でマイノリティのrepresentationも進む。

CG:政党はrich peopleにdominateされてる。政党をなくすことで議員同士のdiscussionが進む。

CO:連立政権が機能しなくなる。政党がなく議員がばらばらに活動するので民主主義にとってむしろハームフル。

 

このラウンドのディスカッションはなかなかmessyでした。

チェア「オポ・ウィンです。」

私「オープニング・ウィンです。」

パ(AC)「クロージング・ウィンです。」

 

自分のランキングはOO>OG>CO>CGで、OGとCOはクロースだと思っていたので、オポ・ウィンは全然ありうるのかなと思っていました。

 

まずOppの2チームを比べて、激論の末CO>OOということになりました。次にCOとCG、OOとCGを比べましたが決着がつかず。そこでOGの話をして、クロースだがOOが少し上という結論になりました。で、ひとまずCO>OO>OGというなかで、CGがどこに位置づけられるのかという話をしました。再びCGとOOの比較をして、OOのMinority representationが進む話とCGのdiscussionが進むことの比較になり、そこでもやはりまたOOのプリンシプルをどう位置づけるか(政党政治の下でマイノリティの利益が保護され、representationも進むということ)という話になり、最後は守り切れなくてクロージング・ウィンになりました。

 

6.まとめ(+ちょっとしたTIPs)

結構アロケ運も良くてラッキーだったと思います。とくにもの凄く大きな発見があったわけではないのですが、OAする機会が多かったので、各チームの論点をテキパキまとめてOAするみたいな手際の良さは少しだけ上達したように思います。簡単に論点毎にまとめると以下です。(と言いつつかなり長くなってしまいました・・・)

 

(1)ノートテイキング

BPだともう少し工夫が必要かも知れないですが、Judgeの総論+ノートテイキング+ディスカッションだと以下の2つがintroductoryでとても良い動画だと思います(by Hart House)。

 

A Guide to Judging Your First Tournament

https://www.youtube.com/watch?v=GXB15uRMWss

 

Chairing Your First Round: A Guide to Oral Adjudication

https://youtu.be/trN0Uu2LvT8

 

ノートテイキングは自分自身かなり試行錯誤しました。最初は以下の1を、後から2を使うようになりました。

 

ノート1

https://docs.google.com/document/d/1aHjxFepNzeCUgrzG_osYiNwnvFCetf5ADp1KiZFTFAU/edit?usp=sharing

 

ノート2

https://docs.google.com/document/d/1z8iwqrDTEFv3r4TF7K1UNokD9vBa6qfmuZ1qZYC2gcE/edit?usp=sharing

 

1は、Debate Flowのところにスピーチで何を言ってたのかと、それに対しての自分のコメントを書く。で、これはあくまでジャッジのノートで、RFDの準備はSummary for RFDのところに書いてました。四角の枠の所に各チームが言ってたことを簡潔に書いて、個別の理由をさらにその下に書くようなかたちでやってました。

 

例えば、私の場合はOAは以下の順番でやることが多いのですが

 

OG→OO→OG・OO比較→CG→CG・OG比較→CG・OO比較→CO→CO・OO比較→CO・OG比較→CG・CO比較(省略する場合あり)

 

OGだったらOGから何を受け取ったかを簡潔に書く、同様にOOから何を受け取ったかを書く、OG・OO比較してどっちが勝っててその理由は何かを書くという具合です。

 

実際には、Debate聞きながら、Debate FlowとSummary for RFDを行ったり来たりして、RFDのドラフトを書くという具合でした。

 

1をさらに簡潔にしたのが2で、四角のところに直接ディベーターが喋ったことを書いて、四角のノート部分と下のRFDのドラフト部分を往復しながら、RFDのイメージを作っていくようなかたちでやっていました。あとは、自分のコメントは青で書くとか、クラッシュは赤で書くとか、POIは下線引くとかを適当に使ってました。フィードバックを求められることも多いので、スピーチを聞いたときのインプレッションとか自分のコメントは適当にメモ程度に残しておくようにしてました。

 

(2)チェアの時

これは誰でもやってることだと思いますが、パネルに順位を聞く→disagreementのあるところを中心に話すという手順でやってました。ジャッジ・ディスカッションは時間がないので、すべてのdisagreementを話すというよりは、時間をかけるべきところとそうでもないところ、自分のなかで優先順位を作っとくと良いと思います。全チームの比較を15分で満遍なく話すのは不可能なので。

 

OA話す順番は、上に書いたのと同じですが、だいたいこの順番でした(ディベートの流れによって変えたりと言うことはありますが)。

 

OG→OO→OG・OO比較→CG→CG・OG比較→CG・OO比較→CO→CO・OO比較→CO・OG比較→CG・CO比較(省略する場合あり)

 

Disagreementが3箇所以上あるとかいうときは、そもそもディベートから理解してる情報が自分とパネルでかなり食い違ってる可能性があるので、いきなり比較から入るんじゃなくて、①OGから何を受け取りましたか/それをどう評価しましたか、②OOから何を受け取りましたか/それをどう評価しましたか、③それでOGとOOをどう比較しましたか、というのを小分けにして聞いたりしてました(チェアが大雑把な質問をして、パネルにこちらの意図が伝わらず長々と説明される・・・という状況はなるべく避けるようにするのが良いと思います)。

 

あとOAするときも、かなりクロースの所は上の要領で、①ディベーターが何言ってたか、②それをどう評価したか、③それはcomparativelyにラウンドでどういう意味があったか、というのを分けて説明するようにしていました。

 

(3)パネルの時

チェアでRFD作るのと同じように、ディベートのフローを作ってそれぞれの比較でのjustificationを考えてというのは同じなんですが、とくにパネルの時に気をつけてるのは以下の2点かと思います。

 

 a.  チェアから何を聞かれているのかを明確にする

  上に書いたことの逆パターンですが、チェアから大雑把な(unclearな)質問をされて、要領がつかめずついついambiguousなor長い説明をしてしまい、結局互いに低い点をつけて足を引っ張り合ってしまう・・・という状況は良くあるように思うので、チェアの質問がunclearだと思ったら(例えば「オープニングどうだった?」的なやつ)、積極的にclarifyするようにしていました。

 

b.  Justificationにeven ifをつけて考える

OAするときは、個々の比較軸(例:OGとOOの比較)で説明できるjustification(理由付け)って2つか3つくらいだと思うんですが、このjustificationが立たなかったとしても、別のjustificationでやはり自分のランキングは正当という理由付けを合わせて考えておくと良くて、そうすると1つの比較に対して4つくらいのjustificationを用意しておくと良いのかと思います。これは結構パネルのときに重要なのかなと思っていて、ディスカッションで自分が考えていたこととか、普通のジャッジが思いつくような論点がすでに出されていて、+αなにかinsightfulなことを言わないといけないということは多いと思います。そのときに、メインの理由はこれだけれども、even if それが成り立たなかったとしてもこのjustificationから結論は同じです、というふうに別の観点を提示するとディスカッションが深まって良いのではないかと思います。このeven ifを持つというのは、パネルの時だけじゃなくて、OAでクロースなチームの比較をするときにも重要になってくるかと思います。

 

かなり長くなりましたが以上です。インプットもアウトプットも足りてないですが、なんとなくジャッジの要領は掴めてきたかなというところで、今回も得るものが大きな大会だったと思います。